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「千花ちゃんに限って」と「アイシテル~海容~」

未だにテレプシコーラ10巻の衝撃をひきずっております。今日一日暗かったです。

最近、ちょっと注目している『アイシテル~海容~』って漫画がありまして。小学生が小学生を殺して、双方の母親がのた打ち回って苦しむという話です。
これだけ書くと、すっごくショッキングなんですが、これがものすごくしみじみと読ませるんです。

実家の母が「BE LOVE」っていう主婦向き月刊誌を購読してて、毎年正月はこれを読んで過ごしてるんです。有名な漫画家の看板作品(紅匂ふ、とか)は面白いけど、無名な漫画家のは、どれもこれも主婦の趣味レベルのひっどい漫画がそろってて、苦笑交じりに読んでるんだけどね、最近、核弾頭レベルのすごい作品が登場したんですね。

続きを読むのに、年末まで待ってられない。というわけで、この作品を読むために、BE LOVEを置いてある漫喫探してわざわざ行ってます。

まだ単行本は発売されてないけど。神戸連続児童殺傷事件wikiの関連項目に早々と作品名が載ってるので、じわじわ注目されてるんでないかと。


あらすじをかるく説明すると、

母親が、主婦友とランチして帰ったら、玄関前に小一の末っ子が帰ってきた形跡があって。でも末っ子はどこにもいなくて、半狂乱になって探すけど、見つからなくて、数日後に死体になって帰ってきて。犯人見つかったと思ったら小学生で。当然少年法で保護されて。

子供の帰ってくる時間を間違えて、たった10分間に合わなかった母親を世間は責める訳です。「おまえが10分遅刻したから息子は死んだんだ」と。「母親失格」「自業自得」だと。

(子供との待ち合わせや帰宅時間に10分遅れた程度のことで確実に子供が死ぬのなら、世界中の子供が死に絶えると思いますがね。時間に超神経質で子供に干渉しすぎな親ならともかく。しかしそんな環境で育つ子供が幸せだとは思えない)

家を取り囲んだマスコミは中学生の長女を見ると「娘じゃなくて母親出て来い」と言い放ち(未成年は顔を放送できないから)、家に入るところを見つかったら「母親が泣くぞ!」「母親映せ!」と嬉々として取り囲む。

まさしく、この世の地獄。

加害者の母親は、「お前の育て方が悪かったから息子が殺人犯になったんだ」と世間から、辛らつな批判と対峙して苦しむわけです。対面した息子は憎しみのこもった目で自分をにらみ、家に帰れば夫と責任のなすりつけ合い。自分こそが被害者だと、わあわあ泣き叫んで暮らす日々。

でもそこで終わらせず、ちゃんと自分を見つめなおし、真摯に反省するようになるんです。しかし、今度は反省前の自分が許せなくなって、生きることすら申し訳ないとまた泣き暮らすことに。

で、事件の詳細が明らかになって、「親が知らなかった子供の顔」や「母親が気づいていたら、注意していたら、事件は回避できた」というターニングポイントも明確になってさ。

また、ここで双方の母親は自分のふがいなさに泣いて暮らすことになるわけですよ。

今月号で、また新たな展開があったんだけども。
ここであるひとつの答えを、被害者の母親が導き出すんです。

    「この世に完璧な母親なんかいない」

確かにそうなんだよねー。被害者の母親は「専業主婦のくせにランチに行った」これだけのことすら非難されたわけですが。友人も作らず、人付き合いもせず、買出し以外一日中家に閉じ持って、家族としかコミュニケーションを取らない母親がいたら、それはそれで大問題なわけで。

そもそも完璧な母親とはなんなんでしょうかね。

母親が完璧ならその子供は、大人しくて行儀が良くて好き嫌いもなくて元気があって病気もしなくて運動も勉強もできて友達もたくさんいて利発で優しくて素直で、親に隠し事もせず何でも相談して、親の言うことも聞いて怪我をすることもなく事故にも事件にも合わず、なんの問題もなくすくすくとまっすぐに育つはずですね。

そんな母親、いるかっちゅーねんって話ですよ。

この二人の母親と、テレプシコーラの篠原千恵子という母親も、また同じなんではないかと思うんです


こっから下はテレプシコーラのネタバレです。ボタンクリックで見えます

あれは、読者も気づかなかったからあれだけの衝撃があったわけで。

そういう伏線はいくらでもあったのに、みんな「千花ちゃんなら大丈夫」と考えてたわけです。まさしく「千花ちゃんに限って」が起こったわけです。

虐めで死んだ子のニュースで「親や友達は何してたの?本人がここまで思いつめてたのに気づかなかったの?」とテレビのコメンテーターが堂々と言いはなつ世の中ですよ。これはちょっと恐ろしい。

千花ちゃんは漫画のキャラクターだけど、もし篠原千花が現実にいる人間だとしたら?私の子供だったら?私の姉だったりしたら――?

千花ちゃんを止められたか?

とめられるわけねーだろって感じです。マジで。

母親が「一流のプリマになること」を娘に託しすぎたのが、そもそもの発端なんだけど。実際、本人の夢でもあり、才能も素質もあって、環境も最高。こんな状況で娘に夢を見ない母親なんかいないでしょ。

ていうか、ああいう育て方をしないとプリマにはなれない世界なんだと思うし。間違ってるかっていったら間違ってないんだよね。

 
まー、あれだけ見事に「篠原千花」という少女の鮮烈な生き様を書き尽くした山岸涼子の才能が一番凄いんだけど。

最後に。
『アイシテル~海容~』に対して思うことは
「こうであってほしい」という理想の家族すぎるんです。優等生なんですよ。

被害者は、ヒステリックに「うちの子を返せ!殺してやる!裁判起こしてやる!」って叫ぶわけでなく、事件の根本をちゃんと受け入れ、加害男児の心の傷を思いやり、加害者家族からの手紙を読んで涙を流すことができる。

加害者家族は、「うちの子に限って」だけを繰り返して、慰謝料もろくに払わず逃亡するわけでも、保護施設に子供を投げ捨てるわけでなく、死ぬまでこの問題から決して逃げずに、息子と向き合うことを誓い、遺族に対して一生頭を下げ続けていく覚悟を決める。

ある意味、ファンタジーなんです。こんな二つの家族が被害者と加害者として一つの事件で対峙する可能性、現実にどれだけあるのかと。片方がDQNだったら成立しないし、漫画だからやりとりがある程度スムーズに行ってる。

だからこの作品に単純に感化されるのは危険だと思うのです。
自分の家族との対話を見つめなおすだけならいいですが、被害者はこうあるべき、加害者はこうあるべき、という理想を持ってはいけない。現実に存在している被害者を追い詰めることになってはならないんです。

自分たちが永遠に第三者でいられるかといったら、いられないかもしれないしね。

舞姫(テレプシコーラ) 10 (10) (MFコミックス)
舞姫(テレプシコーラ)

山岸 凉子
メディアファクトリー

アイシテル~海容 前編 (1) (KCデラックス)アイシテル~海容 後編 (2)
アイシテル~海容 前編 (1)

アイシテル~海容 後編 (2)
伊藤 実
講談社

  1. 2007/02/01(木) 21:59:48|
  2. 読み物とか
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<簡単バスフィズの作り方 | ホーム | テレプシコーラ10巻読んできた。>>

コメント

とても参考になりました

今度ドラマ化されるらしいので、原作ものだとも知らずぐぐってこちらにたどり着きました。
テレプシコーラは読んでいるので、それをとっかかりに、アイシテル・・・についてもとても信頼出来る感想であろうと感じました。
ドラマ見る前にこちらを拝読できてよかったです。
有難うございます。
  1. 2009/03/21(土) 09:20:30 |
  2. URL |
  3. 通りすがり #-
  4. [ 編集 ]

>通りすがりさんへ

ぜひ読んでみてください。
コマ割りや、殺人に至る過程の描写、構成など、
漫画としても、かなりレベル高いです。
絵が古臭いですけどね。でもその古臭さが逆に「お母さん」の悲しみをリアルに浮き上がらせている気もします。

ドラマは加害者側からの目線になるそうで・・・
原作は、愛息を殺されてうちのめされた母親の
「海容」に至るまでの心境を丁寧に描いた作品なので
加害者目線なんて意味ないと思うんですが。

「海容」って、タイトルそのものもおかしくなってしまいます。殺人を犯した息子をその母親が許しても・・・ねえ?とても残念です。

ただ、本文中に書いたように、被害者目線でやると
「遺族はこんなふうに加害者を思いやって許すべきだ」と
声高々に叫ぶ人たちも出てきそうで、
だったら加害者目線の偏った内容でもいいんじゃないかと思ったり、とても複雑な気分です。
  1. 2009/03/22(日) 08:56:54 |
  2. URL |
  3. モカ #T0ca3UNU
  4. [ 編集 ]

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