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「バクマン。」の「岡嶋二人」

バクマン。あのデスノートを作った漫画家と原作者がふたたびタッグを組んで送り出している、未来の傑作。

そこに書かれている内容は、少年二人が漫画家と原作者でコンビを組んで少年ジャンプでデビューするというストーリー。

もうね。これ、読むの辛いんだ。面白いんだけど、胸がきゅーーーーっと締め付けられるような切ない思いで一杯になる。

なぜかというと、どうしても「おかしな二人」とオーバーラップしてしまうから。

岡嶋二人

ちょっと昔、岡嶋二人という小説家がいました。誘拐事件を得意とする推理小説の作家でかなり売れました。

ペンネームからもわかるとおり、執筆担当&ストーリー担当の、ふたりの人間のコンビ名です。

岡嶋二人
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

岡嶋 二人(おかじま ふたり)は日本の推理作家であり、井上泉(いのうえ いずみ、1950年~、多摩芸術学園映画科中退)と徳山諄一(とくやま じゅんいち 、1943年~、法政大学経済学部中退)によるコンビのペンネーム。名前の由来は「おかしな二人」。

二人の出会いから小説家デビューまでの道のり、そこからの苦悩を執筆担当の井上氏がすべてをさらけ出した自伝小説。それが「おかしな二人―岡嶋二人盛衰記 (講談社文庫)」です。

亜城木夢叶と岡嶋二人

バクマンは原作者のがもう大場つぐみと、作画の小畑健が自らの経験を生かして書いている。それはもちろんわかってる。だけど、

亜城木夢叶が岡嶋二人に
高木秋人が徳山諄一に
真城最高が井上夢人に
かぶってかぶってしょうがないのです!

先に小説書こう!と誘ったのは原作者。
誘われたのは執筆者。
アイデアを次々に出してリードしていったのは原作者。
恋人(妻)のために早く小説家で一旗あげたかったのは執筆者。
二人ともずぶの素人。小説の書き方なんて全くわからない。

執筆者の井上氏は、大量に読むだけではなく、勉強にしたい小説を丸ごとノートに書き写して小説の書き方を学んだそうです。

そして二人は頭が良くてとっても器用だけど、天才肌ではなく凡人なんです。素人が芥川賞をめざすところから始まって、自分たちにできることはなんだ、作れる作品はなんだ、俺たちのアピールポイントは何だ、他の奴らが書けないことはなんだ、まだ書かれていないテーマを探せ、と、二人で一心同体にあがいてあがいて、作品を作り出していくんです。

いやもうここらへんすごく熱い。バクマンの子達とちがって、すでにドロップアウト済み、大学中退でぶらぶらしてるニート(ヒッピー)ですからね。追い詰められるどころか、すでに世間から捨てられたような状態で、必死で小説家を目指します。熱いです。

結果、彼らは芥川賞を逃すものの、作品を評価されてとんとん拍子に文壇デビュー。コンスタントにヒット作を出す中堅作家になります。

多分人生で一番楽しかった頃だと思う。自分たちの作りたいことが湯水のようにわきあがってくる、考えたことが面白い形にちゃんとなって、評価もされる。世界が広がり、金も入ってくる。

今の「バクマン。」見てると、ああきっと「岡嶋二人」もこんな感じだったんだなあと、強烈に思い出してしまうのです。

でも「岡嶋二人」は崩壊します。

「岡嶋二人」から「おかしなふたり」へ

蜜月は長くは続かない。
歯車が狂いだします。

もうね、ここからが辛いのなんの。

まず執筆者。自身のことなので、書かれてはいないけど。
おそらく、作品量産による文章力が向上。小説を書く上での構成力もぐんぐんあがって、小説家としての才能が順調に伸びていったはずです。

対して原作者。持っていた知識やアイデアが、次々と小説化されたりボツになったりで、引き出しの中身が空っぽになっていきます。しかし簡単に補充できるもんでもない。

会って話すというプロット作業をしていたので執筆作業をやっていない。ゆえに、作品を形作る生の刺激に触れてない。だからそこから派生するアイデアやプロットができにくい。鈍っていく一方だったと思う。小説家の片割れとしてデビューはしても、小説家としての才能は相方より伸びていないわけです。

相方がアイデアを出すのを待っていては締め切りが守れない。仕方なく自力で書き出す執筆者。

それに甘えてさらにサボる原作者。ギャラは折半。何もしなくても原稿料は入ってくる。ある意味勝ち組だ。(相方が書き上げたものを読んで自信喪失したりもしたんだろうと思うけどね)

このため、執筆者はお前も一回文章を書いてみろと頼む。しかし原作者の腰は重い。「わかった次ね」と言いつつ時間だけが過ぎる。

二人の関係にひずみが生じ、ひび割れて亀裂になり、溝は谷に姿を変え、どんどん深くなっていきます。

しかし、互いに強く結びついているのでコンビが解消できない。何度も何度も話し合う。「次こそちゃんとする」と口だけの原作者、うっすら裏切られるのをわかっていても信じようとする執筆者。

互いに互いを凄い奴だとめちゃくちゃ尊敬してんですよ。相方がいなかったら今の自分はいないと確信してるんです。だからどんなに腹を立てても、見限るべきだとわかっていても、決別することができないんです。

離れるべきだとわかっていても別れたくない。

泥沼恋愛小説のようなんです。文庫のあとがきにも書かれてるけど、これを読んだ人誰もが思うはず。ここらの執筆者の心境吐露は、ヒモニートになった駄目男を支えるけなげな若妻のようです。

クラインの壷 (新潮文庫)岡嶋二人の最高傑作は「クラインの壷」
(あんまし関係ないけど、逆転裁判のエピソード「倉院のつぼ」というタイトルは、この作品のオマージュだと私は固く信じてる)
これはこの時期に書かれたもので、執筆者がほとんど一人で書き上げました。「おかしなふたり」中盤は、この作品を書くための苦労がこんもり詰め込まれてます。爆発寸前の追い詰められた状態で書かれたものが、こんなにも面白くなるのだから皮肉ですね。

どんなふうに書かれていったのか、それは読んでのお楽しみということで、詳しくは書きませんが。ネタバレもすごいので、クライン読んでから推奨。

バクマン。

 

実際のバクマン作家コンビは、「絵が下手なゆえに諦めざるを得なかった元漫画家」と、「自身のアイデアではヒットを作れないが絵のうまさではトップクラスの漫画家」という、互いに別々の場所で失敗を重ね、弱点も知っているコンビなので、岡嶋二人とは違う。これまで一人でやってきて、業界の酸いも甘いも知っているからビジネスライクに割り切れる。その上で、相手はこうしたいんだろうな、という意図を汲みあうことができる良い関係なんだと思う。ま、コンビじゃなくて、原案一人、作画一人と、各個人の名前でやってるんだから当たり前ですが。

でもバクマンで書かれている亜城木夢叶は岡嶋二人と同じく「ふたりで一人」どっちかが躓いたら、火の粉がかかるどころじゃない、一緒に黒焦げになってしまう。

もう、「おかしなふたり」を読んだのは何年前かも覚えてないくらいなのに「バクマン。」読むと、ぐわわわわと記憶がいちいち揺さぶり起こされるんですよね。

高木秋人が、ネームを渡した後、必死こいて原稿書いてる最高の横で漫画読んでたりすると、「おかしな二人」的な匂いを感じて切なくなり、その後ちゃんと手伝ってるのを見て安心する。

ボツになっても諦めずに、ネーム100本作ると言い出す高木秋人を「偉い!それに比べ岡嶋の相方は・・・」とか思ってしまう。

これからの「バクマン。」原作と作画のスタンスの違い。その違いから来る苦悩も、きちんと書いてくれそうで、とっても期待。

最後に。

たいした努力もせず勉強もせず、有名作品の劣化コピー漫画書いてる中途半端な漫画家の卵たち。

冒頭の細切れのアイデア考えただけでストーリーも展開も作画者まかせで原稿料半分かっさらう大物原作者や、原稿チェックも一切しなかったくせにあとから口出して打ち切らせたりする怠慢原作者。

バクマン。は、赤裸々なジャンプ編集部の描写や、ジャンプ体制の不満や指摘など、そういう現実とリンクしてる部分が目立ってるけどさ。

ひたすら努力し目標に向かって驀進する真城最高と高木秋人の姿は、漫画業界にはびこるこういう困った人たちへの強力な皮肉や非難にも思えて、なかなか興味深いです。

おかしな二人―岡嶋二人盛衰記 (講談社文庫)おかしな二人
―岡嶋二人盛衰記
(講談社文庫)

バクマン。 3 (ジャンプコミックス)バクマン。 3

テーマ:週刊少年ジャンプ全般 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2009/07/03(金) 21:21:00|
  2. 読み物とか
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